一昔前までは、一部上場企業と呼ばれていた「プライム上場企業」。名前はどうでもいいが、「就職超氷河期」を経験した僕ら団塊ジュニア世代にとって憧れの存在だったことは間違いない。
1973年生まれの僕は、この時「受験戦争」も経験している。
「受験戦争」を勝ち抜いたとしても、大学生活を謳歌している間に「バブル崩壊」。高卒で入社できた会社に、大卒で入社できないという何とも言えない理不尽を突きつけられた。
団塊ジュニア世代はこの時期、相当に苦しんだはずだ。そこには「一部上場企業=勝者」という方程式が心に深く刻まれていたからに違いない。当時の僕はこの方程式に「もちろん」当てはまっていない。
そんな僕は現在、プライム上場企業で正社員として働いている。
僕の経歴
興味無いと思うが、まずは前提を。
小学校5年生の時に親父が倒れ、それから最後まで仕事復帰は出来なかった。家は貧乏だったが、日本は社会保険が充実しているので、なりなりに暮らせた。
高校は偏差値70の進学校に入学した。毎日パチンコ屋の掃除バイトを夜中11時~12時までしていたので、授業中は眠かった。高校の成績は悪かったし、少し悪いこともした。
大学はMARCHにストレート合格。担任の先生が一番驚いていた。ここで初めて東北を出て東京での一人暮らしを経験する。途中、金に困ったので大学は辞めるつもりだったが、母親の説得と祖母の援助で一年留年後になんとか卒業できた。親には感謝しているし、この時の援助金はもう返している。
さて僕の場合、正直ここまでは「何も考えていない人生」である。
自分が行けそうな「みんながいいと思っている方向」へ歩いただけ。
違うのは「金がない」ということだけだ。
就職活動と新卒入社
僕は「サラリーマンにはなりたくない」と思ってそれまで生きてきた。ただ、何の才能も見つけられず、これ位しかやれる事がないので仕方がない。そして、それは今でも変わらない。
5年の東京生活で「都会が合わない」と感じていたので、東京で行われていたUターン向けの説明会に何度か足を運んだ。そこで、たまたま大手ハウスメーカーの地方販売会社の若い担当者とウマがあったので、そのまま就職を決めた。
正直、就職活動なるものは大してやらなかったし、一部上場企業に入りたいという気持ちもロクに持ってなかった。
ここまで来ても「何も考えていない人生」である。
さて、僕はこの会社を入社1週間で辞めることになる。
理由は簡単に言えば「スーツを着たくない」が正しい。何度か内定辞退しようと思い、周りに相談したのだが、「やってみてからにしたら」という回答ばかりだった。いま思えば、同じく「何も考えていない人生」の人達に相談したからだろう。
僕はここで初めて「自分で決めた人生」を歩むことになる。
カオスの時期
「自分で決めた人生」はやはり辛い事が多かった。フリーター時代はどこへ行っても「せっかく大学まで出たのにね」と挨拶のように言われた。
その頃はいつも「自分のやりたいことは何か」を考えていた。ただ、そんな抽象的な問いでは当然見つからない。そこで、何か自分の得になる仕事をしようと思うようになった。
僕は子供の頃から貧乏で田舎者だったことで、自分のファッションにずっとコンプレックスを持っていた。そこで「洋服屋」で働くことで、自分のファッションセンスを磨こう思ったわけである。
全国展開のショップだったが、アルバイトから初めて2年後には店長、3年後にはバイヤーになった。「自分の目的がある事」で余計な事を考える必要がなく、集中することが出来た。
ただ、20代も後半にさしかかると、「これを60歳まで続けられるのか」という思いが芽生えてきた。バイヤーという「感覚」を武器にする仕事で、自分の武器の脆さを感じ始めた時期でもあった。
僕はここで、「自分で決めた人生」を降りることになる。
なぜかプライム企業
それから足繫く職安に通うようになる。うちの地元は誘致企業が入っている工業団地があるのだが、そこに子会社という形で誘致された企業に採用された。
こうして僕は、他人軸に支配された「何も考えていない人生」に戻ることになる。
その後何年かしてリーマンショックが起き、この子会社が消滅することになった。それで僕はそのまま親会社の社員となるわけである。
ただ、自分にとってここでの仕事は「作業」である。日々、イス取りゲームに励んでいる人々を横目に、ほぼ死んだような状態でこの「作業」をこなしている。もう20年以上になるが、特に思い出は無い。
「プライム企業」と言われているが、中身は「コネ入社のアホ社員」と「出世狙いの金魚のフン」が大半を占める。誰とも話したくないので、仕事は誰よりもこなし、何事も論理的に対応することでうまく距離を置けている。今では上司すら何も言ってこない。
時々、「自分」を武器に戦っていた頃を思い出すが、その時は同時になぜ自分が「何も考えていない人生」に戻ってきたのかも思い出すようにしている。
最後に僕が言いたいこと
ここまで見てきた通り、「プライム上場企業」のサラリーマンなんか、運やタイミングさえ良ければ誰でもなれる。逆に言えば、運やタイミングが悪ければどうにもならない。
超売り手市場となっている今、絶好のタイミングが来ているし、それを実際に肌で感じている。分かり易く言えば、今は募集をかけてもそもそも人が集まってこないような状態だ。
先日、やっと面接に来た中途入社希望者はアラサー高卒で異業種からの転職だったが、面接後に先方から辞退の連絡があった。
要するに「高卒」が「プライム企業」を振るいにかける時代だ。言い方は悪いかもしれないが事実として、彼は以前なら書類審査も通らなかっただろう。辞退理由はワークライフバランス感覚の不一致らしい。
そんな中、「仕事第一主義」の精神を持つ団塊ジュニア世代にもチャンスが回ってくる可能性はある。今の50歳はまだ若い。
ただ、就職や転職を考えるときは「企業ブランド」や「年収」だけが目的になっていないか、一度じっくり考えてみて欲しい。でなければ、僕と同様にその先もずっと悩み続けることになるだろう。
転職は今が絶好のタイミングである。ただ、何が目的かを今一度考えて欲しい。
補足
参考までに、今回面接に来られた方が利用していた転職エージェントはこちら。
申し訳ないが、僕自身が利用したわけでは無いので詳細は分からない。
ただ、今回の方を面接まで導いたことから、優秀なエージェントであることは間違いない。
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